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20 Feb 2014 11:19

幹細胞研究成果の再現、科学者らが苦闘

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  • GAUTAM NAIK AND ALEXANDER MARTIN

[image] JIJI Press/Agence France-Presse/Getty Images

理化学研究所の小保方晴子氏

 科学者らは幹細胞を作る新しい方法を再現しようとしているが困難だとしており、その発表が世界的な関心を呼んだ画期的技術がさらに疑問視されている。

 理化学研究所が先週、マウスの細胞でこの幹細胞技術を示した二つの論文に使われた画像について問題があるかどうか調査を始めたのを受けて、この研究結果は厳しい精査を受けている。

 いくつかの研究所はこの実験を再現しようとしたが失敗したと報告している。ヒトの幹細胞は人体のどようような種類の細胞にもなることができ、多くの病気の治療に使えるのではないかと期待されているが、これまでの幹細胞作成法ではがんのリスクが伴い、あるいは胎芽が使われることから倫理的な問題を引き起こす恐れもある。

 関西学院大学理工学部生命科学科の関由行専任講師は、新方法の再現は単純だと考えていた。しかし、同氏はマウスの細胞でこれを実現することはできなかった。同氏は、さまざまな条件が完全に満たされた時だけうまくいくのかもしれない、と指摘。さらに、あるいは論文では触れられていない何らかのプロセスがあるのかもしれない、との見方を示した。

 スクリプス研究所(米カリフォルニア州)の再生医療センターのディレクター、ジーン・ローリング博士は「ヒトの細胞で試したが、これまでのところうまくいかない」と語った。

 オリジナルの研究成果は1月、英科学誌ネイチャーに掲載された二つの論文で明らかにされた。この論文はマウスの血液細胞が、やや酸性の液体に浸しておくだけですぐに胚性幹細胞(ES細胞)に似た状態になるとしていたため、一大センセーションを巻き起こした。この技術の簡単さとスピードから、一連の病気を治療するための患者独自の組織を作るより良い方法が期待された。

[image] Reuters

研究結果を説明する小保方氏(1月28日)

 カリフォルニア大学の幹細胞研究者ポール・クレプラー博士は、これを再現しようとしているさまざまな研究所の努力を記録したブログを運営している。同博士によると、少なくとも9研究所は再現が実現できなかったとしている。加えて、半ダースほどの一流の研究所はこれがうまくいかなかったことを非公式に同博士に伝えてきたという。

 多くの研究所の実験がうまくいかなかったのは、ネイチャーに掲載された手順に正確に従わなかったためかもしれない。同博士は、例えそうであっても、「この技術はそれほど単純なものではないように見える」と述べた。このことは、簡単にできるというこの方法の主要な魅力を損なう可能性がある。

 山梨大学の若山照彦教授は両論文の共同執筆者だ。同教授は、理研を離れてからは当初の結果をもたらすことができないと述べた。筆頭執筆者の小保方晴子氏は今も理研にいる。

 若山教授は、まだ理研にいた時に一度再現に成功したが、山梨大に移ってからはできていないとしている。同教授は「再現を成功させるために学ばなければならないノウハウがある。言葉で表現するのが難しい技術だが、経験を積んで獲得する必要がある」と話した。

 外部の研究者が、ネイチャーに掲載された画像に不審な点があると指摘したことから、議論が始まった。理研は独自の調査を始めたが、研究結果そのものは有効だと信じているとしている。ネイチャーも調査をしている。

 若山教授は、胎盤の画像の一つは誤って載せられたと指摘。これは画像の操作ではなく、単なるミスだと述べた。その上で、「論文を読めば、誤った画像が使われたことが明白だ」とし、研究成果には依然確信を持っていると付け加えた。

 他の研究者はそれほど寛容ではない。ローリング博士は「このことはある種のずさんさを示唆しており、なぜ論文のすべての点を信じるべきなのかと尋ねたい」と語った。

 ネイチャーも失敗した。同誌には、このような研究結果を実証する大量のゲノムデータを誰でもアクセスできるサイトに置くことを要求するという政策がある。これによって他の科学者たちは研究結果の有効性を測ることができる。しかし、今回の二つの論文についてのゲノム情報はサイトに載せられていなかった。ネイチャーの広報担当者は「管理上のミスだ」とし、「生データが早期に公表できるようにする」と述べた。

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