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浅井文和
浅井文和

STAP細胞は世紀の大発見なのか?

2014年02月25日

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 これは生物学史に残る世紀の大発見なのか。

 「理化学研究所(理研)などが全く新しい『万能細胞』の作製に成功した」というニュースが朝日新聞など各紙の1面トップに載ったのが1月30日。これ以降、刺激惹起性多能性獲得細胞(STAP細胞)をめぐって、さまざまな報道が続いている。2月中旬からは「論文の画像が不自然」などの指摘もあり、理研が調査を始めた。

 発見を主導した理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)のユニットリーダー、小保方晴子さんがリケジョ(理系女子)として注目されたという話は別にして、そもそもいったいどこが大発見なのか。そして、この発見の行方はどうなるのだろうか。

STAP細胞の何が驚きなのか?

 理研やハーバード大学などの研究者が1月30日付の英医学誌ネイチャーで発表した論文の題名は「Stimulus-Triggered Fate Conversion of Somatic Cells into Pluripotency」。「刺激で惹起された体細胞から多能性細胞への運命の転換」と訳せば良いだろうか。マウスのリンパ球を酸性溶液に入れて化学的に刺激したら多能性細胞に変化したという。

 これがどれだけ衝撃的な発見なのかを知るには、細胞の多能性と分化を理解しておく必要がある。

 動物の受精卵は、将来、体のすべての細胞になる、つまり分化する能力、すなわち多能性をもっている。

 受精卵から分裂して、脳・神経、筋肉、血液、心臓、肝臓などのさまざまな細胞に分化していく時、細胞の多能性は失われる。たとえば、いったん心臓の筋肉になった細胞(心筋細胞)は、細胞を取り出して体外で培養しても、心筋細胞のままで、血液や肝臓の細胞に変化することはない。これは「分化状態の記憶」と呼ばれる。

 分化にはDNAのメチル化がかかわっている。DNA上にある遺伝子にメチル化の目印が付くと、その遺伝子が鍵がかかったように働かなくなる。心筋細胞ならば、筋肉として働くのに必要な遺伝子はメチル化されないで機能しているが、使わない遺伝子にはメチル化で鍵をかけてむやみに働かないようになる。

 DNAのどの部位がメチル化したのかは細胞分裂しても、新しく合成されたDNAにも引き継がれる。ただ、卵子や精子ができるときには基本的にDNAメチル化の鍵が外されて分化状態の記憶がリセットされるので、受精卵は多能性をもつ。

なぜ初期化するのか不明

 STAP細胞の驚きは、酸性溶液に漬けるなど、細胞の外からの刺激という、一見簡単そうに見える手法で体細胞の分化の記憶をリセットし、多能性細胞に初期化する原理を発見したということだ。論文によると、STAP細胞では遺伝子のメチル化の鍵が外れてリセットされていることを証明している。

 2006年に山中伸弥・京都大学教授の研究グループが発表した人工多能性幹細胞(iPS細胞)も驚きだった。しかし、iPS細胞が、その言葉通り人工的に4つの遺伝子を細胞に導入して細胞を初期化して多能性を獲得させたため、「ここまで強引にやれば細胞がリセットされるのか」という納得感があった。

 それに比べると、SATP細胞には驚きはあっても、ストンと落ちる納得感がない。・・・・・続きを読む

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プロフィール

浅井文和(あさい・ふみかず)
朝日新聞編集委員。1983年に朝日新聞入社。1990年から科学記者として医学、医療、バイオテクノロジー、医薬品・医療機器開発、科学技術政策などを担当。連載記事「患者を生きる」「がん新時代」「認知症とわたしたち」などに参画。

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